つくり話 隠された街 4
前回の続きです。
「改めまして、ようこそシェルターシティーへ!私たちはこの街のナビゲーター、"ラビ"と"ニャー"です〜!」
と、サロペットのうさぎ、ラビが笑顔で自分と隣のネコをフワフワの手で指しながら話し始めた。ニャーが隣でペコリと頭を下げる。
「さて、皆さんには今からこの街の中だけで使う名前と姿を決めてもらいます。万が一この街の中に知り合いがいた場合にも、この街の姿でいればお互いまず分かりません。安心してここでの生活が送れるようにするためです。なので、本名やSNSなどで使っている名前は使えません。あと、見た目も今の姿に似せないようにして下さいね。じゃあ詳しい説明はニャーからしてもらいます、お願いします。」
ニャーが続ける。
「じゃあ名前と姿の基本ルールを説明するにゃー。名前に使えるのはアルファベット、ギリシャ文字、ひらがな、カタカナ、漢字にゃ。今のところ記号は使えないけど、街の人口増えてきたからそのうち使うかもしれないにゃ〜。さっきラビが話したように、今使ってる名前以外にして欲しいにゃ。あと、街に既にある名前の場合は他の名前にしてもらうにゃ。
姿は基本人型だけど、人間以外に動物も選べるにゃ。動物の種類は大体何でもできるけど、例えば魚だと足がないから動きが不自然に見えるので、嫌なら僕らみたいに手足のある動物をお勧めするにゃ。見た目は確定前にプレビューできるから希望の動物をチェックしてから決めるといいにゃ。一度決めた後でもここに来れば変えることができるけど、しばらくの間は今日決めた名前と姿で過ごすことをお勧めするにゃ。じゃあ早速、お兄ちゃん、好きな名前は?見た目から決めてもいいにゃ。」
きょとん顔の子供の顔を見ながら彼女がフォローする。
「ほら、ゲームする時によく名前つけるでしょ?あと、好きなキャラクター選ぶとか。ここにある間は好きな格好と名前にできるんだって。どんなのがいい?」
子供はしばらく考えると、彼女につぶらな目を向けるとこう言った。
「ねぇ、ぼくドラゴンになりたい。おっきいドラゴンになれば、ママにわるいことするやつをやっつけられるでしょ?ドラゴンになれる?」
その言葉を聞いて彼女は息を呑んだ。言葉に詰まってニャーを見る。
「ドラゴンかぁ、カッコいいにゃ!ただ、普段の大きさは今のお兄ちゃんと同じになるから、いざという時大きく変身できるようにするにゃ。それでいいかにゃ?」
「変身できるの?すごい!それがいい!」
目を輝かせて子供がはしゃいでいる。
ニャーがテーブルに置いてあるタブレットを手に取って操作すると、目の前に大きなドラゴンが現れた。部屋から半分以上はみ出している。
「大きくなるとこの大きさ、これだと不便だから、普段は人型になるにゃ、これでいい?」
タブレットに触ると今度は子供くらいの大きさになる。小さなゴジラのように見える。
子供が大きく頷く。
「名前はどうするにゃ?」
「ファイヤードラゴン!」
「…さすがに、ママ、ファイヤードラゴンは呼びにくいな…それなら例えばドラゴンを日本語にして龍とか…どうかな…?」
「そっかあ、じゃあ『リュウ』でいいよ、ママ」
「了解にゃ、漢字の龍だと名前の登録があるけどカタカナの『リュウ』なら大丈夫にゃ。じゃあ『リュウ』にしていいかにゃ?」
「うん、わかった!」
「じゃあ、後で色とか形とか細かいところを決めていこう。次はママさんを決めるにゃ」
ニャーはタブレットを手に笑顔で彼女の顔を見た。