技術者ワーママ こころとからだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

「脂肪組織由来幹細胞」と「乳房再建」への適用に関するザックリ解説

 

再建手術に関して、新しい選択肢が増えつつあるようです。最近興味深いプレスリリースがあったようなので、この技術について「ザックリ」説明したいと思います。

※毎回で恐縮ですが、分かりやすい表現にするため厳密には異なる説明になっているかもしれません。もし修正すべき点がありましたらご指摘いただければ幸いです。

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注目したのはセルソース株式会社のプレスリリース(4/25)です(下記URLより引用)。引用の説明図にもあるように、病院で自分の脂肪細胞を採取してもらい、専門機関で増やして再建時の注入用脂肪として使えるようです。

https://www.cellsource.co.jp/news/wp-content/uploads/2019/04/13f61a327869ac16b84f5a17f2babc1e.pdf

セルソース脂肪由来幹細胞培養受託サービス、横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科にて採用

~乳房再建における第二種再生医療へサービス提供開始~

 再生医療関連事業を展開するセルソース株式会社(以下:当社)は、この度、脂肪幹細胞の抽出・培養を受託する「脂肪由来幹細胞培養受託サービス」(以下:本サービス)が横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科に採用されたことをお知らせします。
本サービスは、乳房再建手術において著名な佐武利彦医師(形成外科部長、診療教授)を中心に提供開始される乳房組織欠損に対する乳房再建治療(以下:当該治療)に用いられます。なお、脂肪組織由来培養幹細胞を用いた再生医療による乳房再建は、大学附属病院初の事例となります。

 いわゆる脂肪注入の進化版で、自分の細胞を培養して増やしてから再建のタイミングで注入する、というのは何となくわかるのですが、結局何がすごいのかがこれだけではわからないので、「脂肪組織由来幹細胞」なるものについて調べてみました。

 「幹細胞」というのは、分裂して自分と同じ細胞を作ったり、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞の事を指します。ES細胞やiPS細胞などが有名ですね。脂肪由来幹細胞は皮下脂肪組織の中に含まれている幹細胞です。体の広範囲に存在するので容易に採取てきます。さらに、脂肪以外にも骨や軟骨などほかの組織にも分化することが分かってきたそうで、乳房以外にも適用検討が開始されています。

今回の方法は

・脂肪組織由来幹細胞が安全にかつ一度でたくさん採取しやすい

・採取した細胞を増やしてくれるので、移植元の組織に大きな傷が残らない

・自分の組織なので移植後に免疫拒絶もなく、かつ組織の再生を促す働きがある

 といったメリットのある再建の新しい選択肢になる、ということのようです。

 

 以前、再建の選択肢について記事にしていますが、この中のシリコン(インプラント)による再建方法の一部になります。参考までに関連記事はこちら↓

 

blog.komomon.com

 シリコンやインプラントの代わりに脂肪組織由来幹細胞を注入することで、もしきちんと組織が定着すれば、異物感もなくなる可能性があります。脂肪組織をほかの場所から切り出す必要もないので、健康な場所に傷が残ることもありません。魅力的な選択肢になるのではないかと期待できますね。

 この技術は美容整形分野、いわゆる豊胸手術などで実績のある手法のようです。乳がん患者への適用実績については今のところ明確な数は分からないので、例えば部分切除した後に適用するなど、段階的に採用されるのではないかと思われます。

 

 この技術を新しく採用した横浜市立大学付属市民総合医療センターのホームページに乳がんの再建手術についての説明があります。

がん診療 形成外科 | 横浜市立大学附属 市民総合医療センター

 こちらも一部引用すると

乳房切除術後の同時再建術
 患者の希望,出産歴,年齢,職業,趣味,スポーツなどを考慮して術式を選択。
 自家組織による乳房再建・・・深下腹壁動脈穿通枝皮弁(DIEP flap)
               浅下腹壁動脈皮弁(SIEA flap)
               下臀動脈穿通枝皮弁(I-GAP flap)
               大腿深動脈穿通枝皮弁(D-FAP flap)
 人工物による乳房再建 ・・・ティシューエキスパンダー挿入術→二期的にインプラント挿入術
 脂肪注入による乳房再建・・・一期的に脂肪注入(複数回)
               ティシューエキスパンダー挿入術→二期的に脂肪注入(複数回)

 となっており、この「脂肪注入による乳房再建」に「脂肪組織由来幹細胞」が選択肢として新たに追加されるのではと思われます。

 

 注意点としては、この技術の問題点がまだよくわかっていないということ、また、公的医療の保険適用についてどのように考えられているかが明確ではないことなどがあげられます。おそらく長期的には保険適用の対象となっていくと予想されますが、もし今後このような選択肢が出てきた場合、リスクや費用も含めて主治医と相談していくことが必要です。

 

いずれにしても患者の選択肢が増えるということはありがたい話です。もしかすると将来、乳腺組織も再生できる世の中が来るかもしれませんね。

※参考:

Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B9%E7%B4%B0%E8%83%9E

株式会社メディカルノートHP

https://medicalnote.jp/contents/170315-002-GP

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