技術者ワーママ こころとからだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

非浸潤乳がん(DCIS)患者の苦悩

 治療の話がひと段落したところで、非浸潤乳がん患者故の悩みについて触れたいと思います(乳頭のタトゥーについてはまた後日お話ししますね)。

関連記事はこちらにありますので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

www.komomon.com

 

このブログを見に来ていただいている方の中には、ご自身が非浸潤乳がん(DCIS)の診断を受けて、どうしようか悩まれている方もいらっしゃると思います。私の場合は全摘と同時再建手術の決断をして、今は完治していますが、本当にたくさん色々悩んだ結果の決断でした。おそらく浸潤乳がん初期で治療された患者さんとも違った悩みがあると思います。今回は、そもそも非浸潤乳がんについての概要と、なぜ違う悩みを抱えることになるのかについてお話します。

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 非浸潤乳がん(DCIS)とは

浸潤がんは乳管で増殖したがん細胞が乳管を破って増殖するためにしこりができるのですが、時々がん細胞が乳管の中だけで増殖するケースがあるそうです、これが非浸潤乳がん(DCIS)と呼ばれます。

「しこりができる前」の非浸潤乳がんは、自覚症状がなく、マンモグラフィの乳がん検診で見つかることがほとんどのようです。私もそうでしたが、がん細胞が死滅するときに石灰化することがあり、その石灰化がマンモグラフィで見つかるのだそうです。そして、マンモグラフィの検査が普及したことで、今まで触診やエコーで見つからなかったがんが見つかるようになったことで、別の問題が出てくるようになりました。過剰診断です。今までは非浸潤がんが見つかりにくかったことで、初期は「手術治療」していたのが全部手術するの?同じ標準治療でいいの?という議論が出るようになったのです。

治療方針

浸潤がんとの違い

 浸潤がんの場合にはステージがあり、それぞれに合った治療法を選択されます。どころが非浸潤がんは全部同じ0期のくくりに入れられています。非浸潤がんが見つかった場合にどのケースで手術治療が必要なのかを判断する臨床研究が始まっているそうです。ただし、現時点(2018年のガイドライン)では

①がんが広範囲に広がっている場合には全摘

②がんが小さい場合には部分切除+放射線治療

が基本となっているようです。次に示すような「グレードによるリスクの分類」はあるものの、明確な共通の判断基準がまだできておらず、治療方針については主治医や病院によって差があるようです。

グレード分類

非浸潤乳がんの中でも、進行が遅いものと進行が早く浸潤がんに移行する可能性の高いがんがあるそうです。そして、非浸潤がんのがん細胞を調べることで、がん細胞の細胞核の状態が進行の遅いものと早いもので違うことが発見されました。いくつかの分類がありますが、基本的には核の状態で分類しています。

具体的にはがん細胞の核の大きさ(正常な細胞核と比べてどれくらい大きいか)や異型度(歪んでいるなど)が大きいほどリスクは高く、ある基準を超えるとhigh-gradeとなり、それ以下の場合はNon-high-gradeとなります。他には、がん細胞の壊死がある場合にはリスクが高くなるとする分類もあるようです。

 このグレード分類は実際に切除手術後の再発率などにも差があることが分かっています。さらに、リスクの低いNon-high-gradeのがんの中には、無治療(手術をせず経過観察した場合)でも生存率にほとんど影響しないケースがある、という報告もあり、治療をせずに済むがんの基準を見つけたい、という議論は続いています。

 が、分類の基準が複数あることから、病理医によるグレード分類にばらつきが出る可能性があるので、これらも考慮に入れて治療方針の判定をする必要があるそうです。

患者への影響

問題は基準が統一されていないという点です。それによって、実はある程度リスクが分かっていても患者にその情報が共有されにくくなります。例えば細胞診の結果が出て非浸潤乳がんと診断を受けたときに、細胞核のグレードについての説明はありましたか?私は一切ありませんでした。私の場合には広範囲に広がっていて、ガイドラインでは全摘以外の選択肢がないから、説明する必要はなかったのかもしれませんが、私は自分で調べるまでこのような基準がある事すら知りませんでした。

 でも本当にその情報は必要ないのでしょうか?基準が明確ではないから伝えるべきではない情報なのでしょうか?私はそうは思いません。少なくとも自分で治療方針を選びたいと思う患者であれば、どう覚悟を決めるのかに影響する情報なら欲しいはずです。もちろん針生検のように一部のがん細胞の情報だけでグレードを判断するのは難しいかもしれませんが、治療方針を決める上で、どのような検査が必要かも含めて非浸潤乳がんをどのように診断していくのかについても議論が必要なのではないかと感じています。

 

 例えばNon-high-gradeのがんで、範囲が小さい場合、手術と放射線治療、念のためホルモン治療といった治療方針が考えられます。でも、子供が欲しい場合など、自分が許容できるリスクを負ってでも治療を遅らせたい場合があります。手術後、放射線治療が落ち着くまで待ったらホルモン治療は後回しでいいのかとか、できるだけ早くフルメニューの治療をする必要があるのかは、もし指標があるなら私は知りたいと思います。でも、グレードについての説明を聞いた、という話は私は知りません。

 

 その背景は前述の通りですが、患者に「病理検査の結果、がんのリスクは低いタイプだから手術はせずに経過観察で」とは主治医としても言いにくいと思われます。さらに言うと、がんと診断を受けたけれども「標準治療をせずに食事で治った」と話している方の中には、もともとリスクの低いがんだった可能性もあるわけです。

 もちろん改善する可能性はあるのかもしれませんが、初期のがんと診断を受けた方がこういった情報によって「治療しなくても治るかもしれない」と手術を躊躇して進行してしまう不幸にもつながります。初期だから進行が遅いとは限らないのです。是非浸潤がんと同じように、非浸潤がんもどんなタイプなのかを患者が知ることが出来るようにガイドラインが改善されることを願っています。

私が辛かったこと

初期なのに全摘

これは前の記事にも書きましたが、全摘の決断をするまでがとてもつらかったです。初期って言われるとちょっと切るだけでしょ、という空気になるので。。

 恐らく推測ですが、私の場合は「浸潤がんに移行する可能性の高いhigh-gradeのがんが乳腺全体に広がっている状態」だったのではないかと思われます。それを踏まえて、最初の診断に立ち返ると、

「初期だけど全摘」

ではなく

「いつ浸潤がんに移行してもおかしくない爆弾が乳腺全体にいるから今のうちに全摘」

というのが主治医の本心だったと思います。正直それならそう初めから教えてくれた方が早く決断できたのになぁ、と思ったりします。それでも、色々悩んで、色々な人に背中を押してもらった体験は財産になっているので、これはこれでよかったんだと思います。

全摘後の無治療という孤独

無治療って薬も飲まなくていいし、放射線も必要ないし、とても楽だと思います。おそらく同時再建もセットでお願いして、ギリギリまで皮膚ごと摘出したからだと思うのですが、とてもありがたいです。

ただ、一方で、同じ非浸潤乳がんでも部分切除の人は放射線治療やホルモン治療がセットになる場合が多く、他のがん患者の方と仲良くなっても無治療、という話になったとたんに疎遠になります。実際手術の話は出来ても、それ以外の治療は受けていないので、会話に入れないから疎遠になっても仕方ないのですが、同じ手術受けた仲間なのに・・・とちょっと寂しくなります。贅沢な悩みですが。。。

最後に

超初期と呼ばれる非浸潤乳がんですが、やっぱりがんである事には変わりなく、早く見つかってラッキーだったね、と言われる割には治療内容はあんまり変わらなかったりとなんだか腑に落ちないポジションです。おそらく同じ診断を受けた人でないとわからない悩みだと思います。もし辛いなーと悩んでる方はコメント欄にご連絡くださいね。

(もし公開されたくない場合には直接お返事するので連絡先を記入いただければ嬉しいです)

 

 

※参考文献

・「最先端治療 乳がん」 国立研究法人国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、乳腺・腫瘍内科 他 編著 

・週刊 医学の歩み vol.261 No.5 (2017)  396-404 (特集 乳癌のすべて)

・姫路赤十字病院 ホームページ

http://himeji.jrc.or.jp/category/diagnosis/nyusengeka/topics/20110526_02.html

・日本乳癌学会 乳癌診察ガイドライン ホームページ

http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/

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