技術者ワーママ こころとからだの修理日記

技術職のワーママです。初期乳がん見つかったりうつになったり。でも何とか生きてます。

つくり話 隠された街 2

前回の続きです。

 

『シュガー』が説明を続ける。

「では、車を降りる前に一つご協力をお願いしたいことがあります。今からお渡しするゴーグルを必ずつけてから降りるようにして下さい。ドアが開いたら、荷物をすべて持って車から降りてください。スタッフがお迎えして、お部屋までご案内します。お部屋に着くまで必ずゴーグルをつけて下さいね。ではゴーグルを取ってください、付け方をこれから説明します」

座席の前方の一部が引き出しのように開き、手前に伸びてきた。中には大きさの違う二つのゴーグルが入っている。彼女はそれを取り出した。隣でゲームのやつだ!と子供がはしゃいでいる。

「じゃあお兄ちゃんの方からつけましょうか。お顔にゴーグルをあてて、私がちゃんと見えるようにしっかりくっつけてくださいね。お母さん、後ろで長さが調整できるのでダイヤルを回して緩まないように固定してください。できたかな?」

うん、大丈夫!と満足そうに頷く。

「じゃあお母さんも同じようにつけてみてください、終わったら、ゴーグル本体の右側にあるボタンを押してくださいね。」

彼女はゴーグルを装着し、ボタンを押した。ゴーグルから『シュガー』の声が聞こえてくる。ちょうど彼女と向き合うようにシートに座っている彼女が現れた。子供がうわっと声を上げた。

「私の声、聞こえますか?…大丈夫そうですね。では、降りる前に荷物を確認してくださいね。」

彼女は子供にリュックを背負わせると、足元に置いていたバッグを手に取り、シュガーの方を向いた。

「準備は大丈夫ですね、それではドアを開けます。足元に注意して、ゆっくり外に出てください」

車のドアが開き、二人で車から出ると周りを見渡した。ゲームの中で見るような、レンガ造りの建物が並んでいる。隣で子供が歓声を上げながら落ち着きなく周りを見回した。車から降りた途端に子供がゲームのキャラクターに変わっていた。

「あれ、ママが違う!お顔も服もお姫さまみたい!ママ、いなくなっちゃった?」

不安げに見上げてきた我が子の頭を撫でながら彼女は答えた。

「大丈夫、ママ、お姫様の格好になったみたい。ほら、自分の手を見てごらん?」

わっ、僕も変わっちゃった!と子供は自分の体をまじまじと眺めている。

 

「こんにちはー!」

まるでゲームから出てきたようなデニムのサロペットを着た猫とウサギが両手を振りながら出迎える。子供とハイタッチをすると、

「お兄ちゃん、あっちのお部屋で一緒に私たちと一緒に遊ぼう!お母さんとついてきてね、お母さんもこちらにどうぞ〜。」

と近くの建物に向かって歩き出した。子供に手を引かれて彼女は2匹?の後をついていく。

猫がドアを開けて中に入ると、カラフルなソファと丸いテーブルがあり、奥には大きなスクリーンがある。彼女達がウサギに促されてソファに座ると思わず声を上げた。

 

「お疲れさまでした、無事に着いて良かった。」

スクリーンの横に『ユウ』が座っていた。

 

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